STW抽選会の実態調査 | 景品表示法違反の可能性を検証

概要
- 旅行代理店のSTWが抽選ロジックが難しいキャンペーンを実施していたので調査してみました。
- その1
- 「合計2019人に当たる!」と書いてあるのに、何回か試したら毎回当たりがでる。アタリと行っても、一番低いレベルの景品である「STW海外旅行券1,000円分」が応募した直後にメールで当選通知が送付される。
- その2
- その1が成り立つ場合は、最低レベルの景品以外は景品は当たらないことが成り立つ。(1人につき2つ以上の景品が当たる場合は別だが記載は無いし、一般的では無い。)
- 100%当選するので、景表法の有利誤認では?
あけまして
— 海外旅行専門店 エス・ティー・ワールド (@stw_travel) January 4, 2019
おめでとうございます㊗️⛩🎍
2019年もぜひ宜しく
お願いいたします!
本日12時から初売りを
スタートします!
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海外旅行をご検討の方は
要チェック!!
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いきさつ
- 1回目に応募したときに抽選結果が応募直後にメールで来ました。
- メールの内容には「STW海外旅行券1,000円分」が当たったという内容がありました。
- システムを作るエンジニア視点で考えると、合計2019人のリミットがあり、景品は複数種類、リアルタイムで抽選するシステムを作ること自体はビジネス要件定義レベルで欠陥があります。 例えば、以下の事を考慮しなければいけないので付随して定義すべき要件がたくさん発生し、実装に時間がかかります。
- 1人が連続で応募したらどうするの?
- 一度、応募を締め切った後に、運営側が当選する人を決めた方が安全では?
- よって、この抽選会の挙動に不審に思ったので3回くらい引いてみました。そしたら、全く同じ内容のメールが送られてきました。怪しすぎます。定型メールを送信しているだけの挙動とも考えられます。
実験
- 抽選がリアルタイムで行われているようなので、景品表示の内容が正解ならば2019回引けば、全てが当たるはずです。2019回以上引いてみた結果がこちら。

全部同じ内容のメールでした
いつも当店をご利用いただきましてありがとうございます。 海外旅行専門店エス・ティー・ワールドです。
このたびは「STWのお年玉抽選会」にご応募くださいまして誠に ありがとうございました。
気になる抽選の結果は
▼ ▼ ▼ 「STW海外旅行券1,000円分」 が当選いたしました!おめでとうございます!!!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━ 【ご利用方法】 ツアーお申し込み時に、 当選コード「W84LB3F6」 をお申し出ください。 ※お申し出が無い場合は無効になります。
【注意事項】 ●2019年1月31日までの期間中にお申込いただく、パッケー ジツアーのみご利用いただけます。 (航空券・ホテル・オプショナルツアーなどの単品販売にはご利用 いただけません) ●本券に限り、当社が発行するその他割引券と併用してご利用いた だけます。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━
引き続き当店をご愛顧いただきますよう、よろしくお願いいたしま す。
こちらのメールにお心あたりが無い場合は、恐れ入りますがそのま ま削除してください。 このメールは自動配信のため、ご返信はお受けできかねます。予め ご了承の程お願い申し上げます。
配信元:株式会社エス・ティー・ワールド Copyright © STWORLD, Inc. All Rights Reserved.
今後、弊社からのメールをご希望されない場合は下記をクリックし てください。 https://go.stworld.jp/emailPre ference/e/223282/577/xxxxxxxx
- メールの一番下の「今後、弊社からのメールをご希望されない場合は下記をクリックしてください。」と書いてあるURLをクリックすると、以下のページが表示されます。
- 見てわかるとおり、メーリングリストの登録解除フォームです。
- 応募をすると自動的にメーリングリストに登録されるシステムのようです。
- メール配信の管理にはSalesForceを使っている様子。

- 抽選会の注意事項を参考までに張っておきます。

不当表示の可能性がありそうだが
- 今回の抽選は、景品表示法ではクローズドキャンペーンという種別であり、クローズドキャンペーン用の法律が適用されます。
- その1
- 関して色々調べました。大きな所では事実と異なる表記なので「不当表示」にあたりそうです。
- 具体的には不当表示の「その他、誤認させるおそれのある表示」
- 消費者に不利益を与えていないから法律的には軽微な問題になりそう。
- その2
- 当選結果は公開されず、個別連絡するという手順になっています。
- こちらは、確認のしようが無いので外部からでは確認が出来ません。
STWへ問い合わせてみると
要点を引用します。
この度のご指摘の件ですが、顧問弁護士にも相談いたしましたが、 弊社としては不当景品類及び不当表示防止法違反には当たらないと考えております。
但し、社内調査により「STW海外旅行券1,000円分」の当選数が1720名に達しても 当選にストップがかからない状態になっていることが判明致しました。
この不具合に関しては何らかの方法で改善させて頂きます。
その後
- 上記の連絡をもらってから、何度か応募をしましたがシステムの修正は行われませんでした。
- 2019年のキャンペーンサイトは完全に削除して逃げた様子。
まとめ
STW抽選会の実態調査結果をまとめます。
発見した問題点
- 表示内容: 「合計2019人に当たる」と表示
- 実態: 全応募者に1000円券が当たる(100%当選)
- 実験結果: 2019回以上応募してすべて同じ当選メール受信
- システム挙動:
- 応募直後に自動で当選メール送信
- メーリングリスト自動登録(SalesForce使用)
- 1720名到達後もストップがかからない不具合を企業側が認める
法的問題の可能性
- 景品表示法の有利誤認: 100%当選なのに「2019人に当たる」という限定表示
- 不当表示: 「その他、誤認させるおそれのある表示」に該当する可能性
- 消費者への影響: 直接的な不利益は小さいが、透明性に欠ける運用
企業側の対応
- STWの回答: 顧問弁護士と相談し「景品表示法違反には当たらない」と主張
- 不具合の認識: 当選数が1720名到達後もストップがかからない状態を確認
- 改善の約束: 「何らかの方法で改善する」と回答
- 実態: 回答後も修正されず、最終的にキャンペーンサイトを削除
考察
- 実態: リード獲得(メールアドレス収集)が主目的の可能性が高い
- 立証の困難性: 内部告発がないと告知内容と異なる運用の立証は難しい
- 行政処分リスク: 内部告発があれば行政処分の可能性あり
- 消費者庁の対応: 小規模案件のため積極的な対応は期待しづらい
教訓
事業者には透明性の高いキャンペーン運営を求めたい。エンジニア視点では、リアルタイム抽選システムは要件定義レベルで課題が多く、応募締切後の抽選方式が安全で透明性も高いです。
追記:法的観点からの詳細分析(2026年1月5日)
免責事項: 以下の分析は大規模言語モデル(Claude 3.7 Sonnet)による法的考察であり、正式な法律相談ではありません。実際の法的判断は弁護士や消費者庁などの専門機関にご相談ください。
1. 総付景品規制違反の可能性(最重要論点)
事実認定:
- 本キャンペーンは実質的に100%当選(全応募者に1000円券)
- 「抽選」という形式を取っているが、実態は全員に景品を提供
法的分析:
景品表示法における景品類の提供方法は以下に分類されます:
- 一般懸賞: 購入者の一部に抽選で景品を提供(最高額取引価額の20倍または10万円)
- 共同懸賞: 複数事業者が共同で実施(最高額30万円)
- 総付景品: 購入者全員または来店者全員に提供(最高額200円または取引価額の10%)
本件の該当性:
100%当選であれば、これは「抽選」ではなく**「総付景品」に該当**します。
- 総付景品の限度額: 200円(または取引価額の10%のいずれか高い方)
- 本件の景品: 1,000円券
- 結論: 限度額200円を800円超過しており、明確な景品規制違反
STW側の主張の推測:
STW が「違法ではない」と主張した根拠は、おそらく以下のいずれかです:
- クローズドキャンペーン(一般懸賞)として扱えば景品規制をクリア
- 一般懸賞なら最高10万円まで可能
- しかし、100%当選では「懸賞」の要件(選択性)を満たさない
- 1000円券の「実質的価値」が低いと主張
- 使用条件が厳しい(2019年1月31日まで、パッケージツアーのみ)
- 併用可能という点では確かに価値は減少
- しかし、額面1000円である以上、200円を大幅に超過
2. 有利誤認表示(景品表示法第5条第2号)の該当性
条文:
商品又は役務の取引に関する事項について、実際のもの又は当該事業者と競争関係にある他の事業者に係るものよりも著しく有利であると一般消費者に誤認される表示
本件の検討:
- 表示内容: 「合計2019人に当たる」(限定性・希少性を強調)
- 実態: 全応募者に当たる(100%当選)
- 消費者の誤認: 「抽選に当たった」という特別感を演出
法的評価:
通常、有利誤認表示は「実際よりも有利」と誤認させる場合に問題となります。本件は逆に「実際よりも不利(当たりにくい)」と誤認させています。
しかし、景品表示法第5条第3号の**「一般指定」第6項(おとり広告)または「その他誤認されるおそれのある表示」**として問題になる可能性があります。
結論:
- 典型的な有利誤認表示ではない
- しかし、「限定性の偽装」は消費者の合理的な選択を阻害する不当表示として問題となりうる
- 特に、メールアドレス収集が主目的であれば、「おとり広告」的性格を帯びる
3. 個人情報保護法の観点
問題点:
応募時に自動的にメーリングリストに登録される仕組みは、以下の点で問題となる可能性があります:
- 同意取得の明確性: 抽選応募とメーリングリスト登録を分離していない
- 利用目的の明示: 「抽選のため」と「メール配信のため」の利用目的が混同
ただし、2019年当時の個人情報保護法の運用では、この程度であれば直ちに違法とは言えない可能性もあります。
4. 法的結論と違法性の評価
違法性の評価(5段階):
| 論点 | 違法性 | 根拠 |
|---|---|---|
| 総付景品規制違反 | ★★★★★ | 1000円券は200円限度額を800円超過。最も明確な違法性 |
| 不当表示(限定性の偽装) | ★★★☆☆ | 消費者誤認はあるが、直接的な不利益は小さい |
| 個人情報保護法 | ★★☆☆☆ | 同意取得の明確性に疑問はあるが、当時の運用では微妙 |
総合判断:
-
総付景品規制違反が最も明確
- 法的には最も問題が大きい
- 消費者庁による措置命令の対象となりうる
- 過去の事例: ディノス・セシール事件(2015年)で類似の事案に措置命令
-
STWの「違法ではない」という主張の脆弱性
- クローズドキャンペーンとして扱う主張は、100%当選という事実と矛盾
- 「選択性」がない以上、一般懸賞ではなく総付景品に該当
-
行政処分の可能性
- 内部告発または消費者からの通報があれば、消費者庁が調査する可能性
- ただし、キャンペーンサイトが削除されており、立証が困難
5. 実務的な示唆
事業者へ:
- リアルタイム抽選システムは透明性確保が困難
- 100%当選なら素直に「全員プレゼント」と表示すべき
- 総付景品の200円限度額を遵守すること
消費者へ:
- 「全員当たる」と感じたら、消費者庁や消費生活センターへ相談
- 不当なキャンペーンに対しては声を上げることが重要
参考文献:

